取り乱す午後

  • 2019.01.06 Sunday
  • 17:57


Dinosaur収録の
『ハルカ』を初めて聴いた時に
印象に残ったのは、このワードでした。


互角のつもりで抱き合い
ついに僕のものになった
そう思ったのもつかの間
君はちょいとレベルが違う
取り乱す午後

(『ハルカ』/B'z)




午後




いや、時間設定が巧みだなあって。

このシチュエーションの午後って、
夜通し抱き合った彼女と朝を迎え、
日常に戻った頃の時間帯。

周りを見て、評判を耳にして、
『あれ?僕本当に彼女をモノに出来てる??』
って不安を抱き始めるという。
ホラ、お昼って大体どシラフじゃない。

思い込んで突っ走った人が
我に返る瞬間の滑稽さというか、
気の毒だけどクスッと笑ってしまうような
コミカルなムードが伝わってくるなと。
何せ冒頭3行目から急転しているからねw


他に、稲葉さんの歌詞で
印象的な『午後』はこれかな。


土曜日の午後の空見上げりゃ
怪しげなグレイにかすむ

(『雨だれぶるーず』/B'z)


今日が土曜日ってことは、
当然『夕べ』は金曜日。
フライデーナイトに無断で朝帰りした
妻(仮)が、寝坊してきて
『僕』の淹れた珈琲を優雅にすする。
もう、明確な力関係。

ハルカと比較すると、
こちらは超シリアス。
前日からずーっとどシラフで
悶々として迎えた、
疑惑の午後である。


ちなみに『午後』といえば
心理学者ユングの
『人生の午後』という考え方がある。

『人生の午後』とは、人の一生の中で
中年期に差し掛かり、老年に向かう頃。
ユングはこの年代を人生の境目と考え、
転換期と同時に、危機を迎えやすいことも
指摘している。

土曜の午後って一週間の終盤だよね。
中年夫婦の関係崩壊を示唆するような、
上手い時間設定だなと。


この2つの歌詞を見ると、
『午後』は冷静に物事を考えられる
(または考えてしまう)
時間帯として使われているんだけど、
これ以降の時間帯となると
途端に艶事を含み始めるんだよね。


キミに飲みほされた グラスがカランと鳴り
真剣に妄想中の僕は 蒸し暑い夕方に気づく

(『横恋慕』/稲葉浩志)


ソロだけど。
あと私はどんだけ
横恋慕の話するんだって感じだけど。
(→世界の、におい)
それは置いておいて。

アイツにばれないように
意味深な素振りを見せてくる『キミ』と
夕方に店を抜け出した後は、
まあ"夜"を迎えますよね?っていう。

これ、ただの夕方ではなく
『蒸し暑い』と設定したことで、
悶々と溜め込まれた想いが
じとぉーっと伝わってきて、
くぅ〜上手いー!って唸る。毎回。
ボクも今夜飲みほされたいってやつね。

で、夢中な夜を過ごした
次の日の午後。
『あれ?僕本当に彼女をモノに出来てる??』
どシラフで我に返るわけですね。
エンドレス。
エンドレスうじうじ。
すぐそういう女に引っかかっちゃう。
最高。

読んでくださってありがとうございました。

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    ルーフトップ

    • 2019.01.05 Saturday
    • 01:35


    アルバムDinosaurの中でも
    とりわけ情景描写が好きで
    かつ優れていると感じるのは、
    ルーフトップだなあ。


    息を切らしてふたり
    暗い階段駆け上がる
    まだ見ぬ素敵な世界
    待ってると信じながら


    暗い階段−先が不確かでも
    物怖じしない、若い二人。
    『まだ見ぬ素敵な世界』は
    二人の未来のビジョンを
    重ね合わせているんだよね。

    One night 何気に君の歌声聴いて
    抱きたい僕は気圧され心細くなってゆく


    『抱きたい』という言葉から、
    『僕』は『君』に対して
    友情以上の進展を望んでいるのが分かる。
    『君の歌声』とは、夢を語る言葉の
    隠喩なのかなと。

    そして、相手の突然大人びた姿に
    二人が見つめる未来が
    異なっていることに気付き、
    動揺する『僕』がうかがえる。

    屋上からはまだ見えるかい
    眩しい星の輝き
    君に追いつきたいけれど
    届かないんだ歯がゆい


    『屋上』とは、当時の2人の
    現在地、到達点をあらわしている。

    さらに、遠く輝く星には
    きらめく思い出と同時に、
    届かない現在の君を
    重ね合わせているのかな。

    Sunrise 薄い闇の中さよなら告げ

    新たな生活を決めた君にとっては
    新しい夜明け≒『Sunrise』だけど、
    だけど君と別れる現実しか
    目の前にない『僕』にとっては、
    漠然とした不安≒『薄い闇』を抱える
    朝だったのだろうな。

    屋上からはまだ見えるかい
    泳ぐように流れる雲


    ここの解釈は色々考えられるんだけど、
    対になる一番の歌詞が効いているのと
    『泳ぐように』流れている所から、
    停滞した黒い雲に抱くような
    暗いイメージが無いんだよね。

    なので、流れる雲は状況変化を暗示し、
    同時に、変わっていける対象への憧れを
    あらわしているのかなと。

    つまり、星と雲のどちらにも
    『君』を重ねているのかなって。


    優しい風の中で君が
    僕を真っ直ぐ見た事
    あの階段に響いている
    密やかな笑い声


    誰にも言わないで重ねた
    逢瀬だったんだろうな。
    立入禁止の場所だったりして。
    色々と想像を掻き立てられる、
    大変秀逸な表現だなと。

    『あの階段に響いていた』ではなく、
    現在進行系なんだよね。
    ここから当時の想いが消化出来ず
    自分の中でリフレインし続けている、
    『僕』の葛藤が垣間見えるなって。

    さらに『風』は上に書いた
    『泳ぐように流れる雲』と
    リンクしているように感じる。

    『順風満帆』『逆風』など、
    風はその時の状況を比喩する時に
    使われるものだ。

    『優しい風』という比喩に、
    ネガティブな印象は受けない。
    別れの瞬間を描いているにも関わらず。

    それは大きな志を抱いた君と別れた後、
    寂寞感に包まれながらも
    同時にその姿勢に憧れを抱いて
    自らも変わろうとする『僕』の、
    心の変化も表しているからではないかな。

    『届かないんだ歯がゆい』で終わるため
    ハッピーエンドとは言えないかもしれないけど、
    上記のような言葉選びから、悲壮感はなく
    幼い頃経験した片想いを思い出して
    鼻の奥がツンとするような。
    そんな切なく、優しさを感じる歌。
    大好きです。


    …これは情景描写の話とは違うので
    余談になるんだけど、
    サビラストのフレーズを
    実際に発声してみると、

    『き [i] み [i] に[i] おい [i] つき [i] たい [i] けれど
    とどかない [i] んだはがゆい [i] 』

    『き [i] み [i] のき [i] もち [i] をし [i] っかり [i] と
    つかみたい [i] のにはがゆい [i] 』

    という具合に、母音イ [i] が
    多用されているんだよね。

    これによって、まとまりがありかつ
    少しだけ引っかかりを覚える。
    ここに『僕』のなかなか前に進めない
    もどかしさが出ている気がして
    上手いなーと思ったのでした。
    終わり。

    読んでくださってありがとうございました。

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      シラセ

      • 2017.01.22 Sunday
      • 18:00

      眠れず、ぼんやりと佇む
      窓の開いた部屋。
      カーテンが揺れる。

      『何もない朝』に
      優しい陽射しと風が
      不意に何かを運んできた。


      これは淡いゆめなの?

      話したいこと 山ほどある
      でもいつでも 気づくのが遅い



      自分をせめる気持ちに、
      ふわりと降ってくる声。


      透き通る あなたの声だけが
      闇をつきぬけて
      こわれそうな心を
      鎮めてくれるよ

      (『あなたの声だけがこの胸震わす』)


      大人になると、
      悔やみ、悲しみ、辛い気持ちまで
      隠して生きていかなきゃいけなくて。

      そしてひとりになった時、
      不意に襲ってくる苦しみに
      潰されそうになる。

      だけど美しい思い出と、
      そして、きっと、
      大切だった『その人』自身が
      包み込んでくれる。


      これからはずっと一緒


      どこまでも伸びる美しい声が、
      まるで親を呼ぶ子供のような
      ストレートな叫びで、
      心を強く締め付けられる。


      そうだね、いつも一緒にいられるんだ。
      もう離れることはない。


      幼い子供の泣き声を聴いたような、
      聖なる祈りを見たような、
      そんな気持ちになる曲です。


      INABA/SALAS 『シラセ』


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        アイシアイサレ

        • 2017.01.08 Sunday
        • 15:51


        かっこいいなあ。
        INABA/SALAS、想像よりずっとかっこよくて
        語弊があるけど安心したし、
        嬉しくて仕方なくなっている。

        まだ新しい音楽や、声を
        魅せてくれるんだなあ。


        INABA/SALAS “AISHI-AISARE”




        懐かしさと新しさを感じる。
        ついスウィングしたくなる心地良さ。
        この曲大好きだー!
        稲葉さんとか抜きにしても
        街でかかってたら『お?』ってなると思う。
        個人的に非常に好み。


        ぱっと聴きでストレートな
        いわゆる胸キュン系ラブソングって
        久々、というか殆どない気がする。

        まあ胸キュンとか言いながら、よく聴いたら
        すっごいワードが飛び出してるんだけどね。


        アイシアイサレイキル
        アイシアイサレシヌ



        外国語かと間違えてしまいそうな、
        呪文のような、ささやく歌い方。

        『死ぬ』って相当きつい言葉なんだけど、
        この歌い方のおかげか、さらっと入ってくる。

        どうしてこの言葉を選んだのかな?と
        ぼんやり考えていて、
        年末の紅白に出ていた
        嵐の歌のテロップに釘付けになった。


        百年先も 愛を誓うよ 君は僕の全てさ
        (嵐/One Love)


        なるほどー!!(何が)


        いやw稲葉浩志という人は
        『一生一緒にいてください』とか
        『永遠に君を愛する』とか、
        書けない(書かない)んですよね。
        (…って書いてたらどうしようw)

        多分、『気持ち』を永遠に誓ったりしない。
        それが誠実さなのか、自信のなさなのか、
        歌詞のポリシーなのかは分からないけど。

        ある程度、人との距離感を大切に付き合うというか、
        同一視することをあまり好まないというか。


        LIVEや公開録音なんかでも、
        多くのアーティストはファンについて

        「ファンのみんな」「ファン」
        「君」「オマエタチ」

        って割と普通に呼ぶと思うんだけど(最後)、
        稲葉さんの場合、大体呼び方が

        「皆さん」「オーディエンス」
        観客の人達(これ笑ったw)」

        なので、慣れてない人から一度
        「他人行儀すぎてちょっと冷たい感じがする…」
        って言われたことがあるw
        なお、慣れたらそれがクセになった模様。

        これも先ほどの、同一視を好まないことに
        起因しているのかなと勝手に考えている。
        『来ている人は当然自分のファン』と思えない
        自信のなさ(謙虚さ)もあるだろうけどw

        そんな彼が『一生一緒に居てください』
        という歌詞を書く場合、
        こういう表現になるのかなと思ったんだよね。


        愛し愛され生きる
        愛し愛され死ぬ



        生きる、そして死ぬ。
        人生を歩むその中で
        何が一番(喪うと)悲しいのか痛いほど分かっているから、
        「どうかいつまでもここにいてほしい」
        ということなんだろうな。

        最後に各季節が入っているのもいいよね。
        君がいればそれらが全て『優しい』のも。
        ハズムセカイに通じるものがある。

        …同時に、冬が無いことも気になるけどね。
        もしかしたら
        「春の陽」「夏の雨」「秋の予感」
        全て、人生を隠喩しているのかもしれない。


        余談だけど、自信がないといえば
        「無我夢中で取り戻したい」
        強い意志を告げておきながら
        「自分勝手ならゴメンナサイ」って言っちゃう所が
        あーー稲葉さんらしいなーー!って
        自分勝手に唸ったのでした。


        あー好き。
        今年も好きです。


        読んで下さって
        ありがとうございました。
        0

          『許す』ということ -Symphony#9とguilty-

          • 2016.06.12 Sunday
          • 15:38


          稲葉浩志ソロ歴代曲の中でも
          個人的にいきなり強烈な存在になった
          Symphony#9について、
          このフレーズがやけに気になっていて。


          相手が悪であろうと
          優しくありたいそれが
          自分の理想だなんて
          微笑んでみせた



          LIVE感想でも書いた通り、
          最初私はこのフレーズは
          『あなた』が言ったもので、
          主人公がとても高潔な相手に
          嫉妬しながら焦がれている、
          という印象があった。

          確かにさらっと聴くとそう取れるんだけど、
          このフレーズ自体に人称がないだけに
          実は真逆にも転んでしまうのかなと。

          真逆というのは、
          これが『オレ』の言葉だという場合。
          相手が悪≒『あなた』という
          解釈も出来るんじゃないかと
          不意に思ったんだよね。

          『悪』と言っても、
          刑事罰対象になるようなものとはまた、
          ニュアンスが異なる。

          多くの人が、生きていく中で
          他の誰かを傷つけてしまったり、
          デメリットを与えてしまうことがある。
          日常の中の、大小含めたそれを
          さしているんじゃないかなと。

          ──「相手が悪であろうと
          優しくありたいそれが
          自分の理想だなんて
          微笑んでみせた」
          という歌詞も印象的でした。
          “許す”というメッセージも
          含まれているのかな、と。

          メッセージと言うと
          イメージを限定してしまうところもあるので、
          好きなように聴いてもらえればいいんですけどね。
          許すことは美しいし、かけがえのないことだけど、
          1人の人がそう言っていても成立しないじゃないですか。
          こちらが許したとしても、
          相手のほうは何も気付かないで、
          反省しないで過ぎていくこともあるだろうし。
          そういう構図、人間関係は
          どこにでもあると思うんですよね。
          許すこと、譲ることの美しさもあるし、
          物悲しさもあるっていう。
          ナタリーインタビュー


          相変わらず断定をやんわり避けているのが
          彼らしい、というのは置いておいて。



          『許す』という言葉で思い浮かぶのは、
          B'zのguiltyだ。


          あの子が誰かを傷つける
          何でも許したあなたのせい



          この曲は家庭
          (または愛情を持って形成された集合体)の
          崩壊危機を歌っている。

          家族や仲間って結構、
          色々な失敗や理不尽を
          無条件で『許して』しまいがちだけど、
          この曲はそれこそが
          臆病と怠惰からの行為であり、
          想っているならあやまちを許さず
          断罪する時はすべきだと歌っている。
          自分のためだけでなく、
          誰あろう、愛する相手本人のために。


          一方、Symphony#9の『あなた』は
          恋い焦がれる相手か
          畏敬の念を抱く相手か、
          そういった対象だと読める。

          夢中で想うあまり
          相手のネガティブな面すら
          魅力的に感じて惹かれて、
          結果『許して』しまう。
          こういったことも割と
          よくあることではないかな。

          最後の英詞の部分は、
          自分が対象とする人を
          非常に必要としている、
          大事にしているという側面もありながら、
          どこか別のところでは
          自分を蝕んでしまう相手になってしまうという
          側面も持っているということを、
          意味合い的に自分が納得できる言葉で、
          でも思いついたままに言っている感じで
          表現しています。
          THE RAGE インタビュー

          そう、この曲はある意味、
          英詞の部分に核がある。


          mystery
          fantasy
          ecstasy
          jealousy
          energy
          enemy
          elegy
          remedy
          history
          victory
          philosophy
          identity



          愛するあなたを喩えるYou are…の中に、
          決して良い意味ではないものが潜む。
          enemy、なんてギクッとするよね。

          何もかも投げ出して
          自分以外の誰かを愛することは
          尊いことだけど、
          愛するあまり相手を許し続け
          それが行き過ぎた結果、
          相手にも自分にも
          マイナスの波動を生み出してしまう。
          そんな側面も、悲しいかな存在する。

          だけど、願ってしまうのは
          やっぱり愛しているから。


          あなたに幸せが訪れますように


          質量を増し過ぎた想いというのは、
          時に『憎しみ』とすら表裏一体で。

          Symphony#9は、
          愛する人『あなた』の
          『歌いかけ』『囁き』≒言葉の
          すべてを受け入れ、許すことは
          必ずしも清らかなものではない、
          という人間の感情の難解さを、
          幻想的でやや悲劇的な
          音と声の重なりと共に表現している。
          慄くような傑作だと、私は断言したい。



          …さて…(えっ)
          相変わらず尻すぼみであることよ。

          Symphony#9って書きたいことが
          おっそろしいほど多過ぎて、
          話が飛びまくりそうになる。

          そもそも、頑なに教えてくれないw
          #9って何なの?とか、
          途中散りばめられた
          気になりすぎるフレーズとか。
          いっぺんに考えだしたら
          私の低いスペックでは
          爆発しそうになるので、
          とりあえず少しずつ…。


          まあ、今回の解釈も冒頭に書いた通り
          『相手が悪であろうと〜』のくだりは
          ストレートにとらえれば
          主人公が嫉妬してしまうほど
          燦然と輝く『あなた』が言った言葉だろうけど、
          稲葉さんの歌詞って本っ当によく出来ていて、
          聴く側のポジションやコンディションで
          真逆の意味にもハマってしまうことが
          よくあるんだよね。

          時々それで、ガーンと打ちのめされる。
          今回も唐突にそう聴こえたから、
          敢えてそっちの側面で考えてみた。

          歌詞の行間を勝手に考えて
          こんがらがってぐっちゃぐちゃになりながらも
          答えを出そうとする内に、
          実は私自身の色々な事を
          考えさせられているんだよね。

          迷いこむことで、頭の中を
          かき混ぜて洗い流し、冷静になれる。
          つくづく、好きだなあ。
          時々、好きすぎて
          嫉妬してしまうけど。


          最後まで読んで下さって
          ありがとうございました。

          0

            心配いらないよ 綺麗ですよ

            • 2015.12.13 Sunday
            • 22:39


            『羽』の発売まであと一ヶ月ほどになった。
            他のカップリング曲も
            じわじわ流れてきはじめたね。

            羽はイントロから物凄くかっこよくて
            音楽の目覚めがエレクトロニカ
            (素人が適当に言ってますよー)だった私は、
            曲自体が撃ち抜かれるほど好みなんだけども。

            まだ一番だけ聴いた状態で、
            ラストのこのフレーズが
            またしても涙腺を直撃してきて参った。



            大丈夫 僕は君を忘れない



            こんなキャッチーな曲なのに、
            このフレーズからは
            『救済』の二文字が浮かんだんだよ。


            『救済』で思いつく曲といえば、
            やっぱりSalvationかなと思う。



            うごけないのなら もうしばらく
            とどまればいいよ 僕は忘れていない




            Salvationは、傷付いて心を閉ざし
            人生に立ち止まってしまった人のそばに
            そっと寄り添う曲。


            羽は(今公開されている部分だけで言うと)
            Salvationとは少し違って、
            『傷を抱えたまま飛ぼう』という歌詞。
            稲葉浩志ソロ楽曲では珍しく
            一見、背中を押す歌詞のように見える。

            まだ未熟だけど立派な『羽』を持つ
            若者に向かって声援を送っているようだ。
            もちろん年齢問わず、諦めたくない人々にもね。

            ただし、やみくもに応援するわけではない。
            『その目に映るものが全てというなら』
            『違う場所見てみましょう』と
            アクションを起こすことを勧めながらも、
            失敗して降り立つ場所を失う不安を
            『大丈夫 僕は君を忘れない』と
            包み込む優しさがそこにある。


            人は何か辛いトラブルがあったり
            環境が変わってしまったり、
            周囲の人々が充実していると感じた時、
            『自分だけ取り残される』という
            感覚を抱く事があるもので。

            休養・リフレッシュが必要なのに、
            全く休めた気がしない。
            こんな経験をした人は
            割といるんじゃないかな。

            『直接命に関わらないけど、辛い』
            という感情。
            誰にも相談出来ず、
            心に溜めてしまいがちな気持ちを
            稲葉さんはすっと救い取り、
            歌ってくれるんだよね。

            …これはB'zの話だし、
            例に出すのはちょっと迷うけど、
            あの年もそうだった。

            うずくまって泣いている『私』を
            いつも見つけてくれる人だなあって。

            羽の特典映像に、
            諦めていたen-ballのSalvationを
            収録してくれたのも本当に嬉しかった。
            きっと偶然だろうけど、なんだか
            繋がっている気がして嬉しかった。

            初代enから好きになって、もう11年。
            何だかんだで靴眄犬ている内に
            見られることになって幸せだ。

            勝手にいつも救われている。
            どうもありがとう。

            0

              わるいゆめ

              • 2015.08.16 Sunday
              • 00:26


              個人的に大好きなアルバム
              『ACTION』の中でも、
              『わるいゆめ』は突出して好きな曲。
              飛び抜けて好きになった曲、と
              言った方が正しいかな。
              派手さはないのに、
              心にじわじわ食い込んでくる感じ。

              イントロからベースと交互に
              サビまで延々と繰り返される
              ッジャッジャッ(素人表現)って
              エレクトリックピアノが、閉塞感を煽っている。
              んじゃないかな。
              それが2番になると
              ジャッッジャッ(素人表現)と後ろ倒し、
              更に音を重ねていて、
              これで物語展開を出しているのかな。
              と、素人が言ってみる。
              このエレピとベース音がとても良い。
              アレンジがちょいジャジーなのもかっこいい。

              音楽的な事に対しては
              詳しい人が語ってくれるだろうから、
              素人はこの辺にしておく。

              …というわけで今回も、
              やっぱり歌詞の話です。



              この『わるいゆめ』の歌詞は
              『部屋で夜中に悩んでいる人』
              一人しか登場しない。


              12時すぎてひとりで ムリヤリ見る話題作
              場面がだらだら流れて これ以上飲み込めません

              おまえはどこに



              冒頭から悲劇的事件をにおわせる、
              容量オーバーの主人公。
              気分転換に観た人気映画も
              全く頭に入ってこない状態。


              私がこの曲の歌詞で
              非常に面白いと感じる点。
              それは、


              また朝が来そう


              タイトルが『わるいゆめ』なのに、
              全く寝ていないところ。


              1番で、

              ワルイユメでも見てるようで 

              と喩えていて、
              2番では

              ワルイユメからまだ覚めない

              と断定形で表現されているけれど、
              彼は決して眠れたわけではない。
              不眠の状態で、悪夢を語る面白さ。
              現実こそが『ワルイユメ』というわけ。

              それをお洒落に飾った言葉ではなく、
              「思わずクスリ箱あさる」
              「いっそ金しばりの方がいいよ」
              「そういや虫歯も痛くない」
              などと、
              うっかり笑ってしまうような
              生々しい表現をするのが彼らしい。
              「ああーもうすっげー辛い」って
              聞こえてくるようだ。
              本当に辛い時って確かに、
              他の小さな傷みには神経がいかなくなるよね。


              『ワルイユメ』は、
              どうして現実になってしまったのだろう。


              好きなものなんかない方が 楽な道を歩ける
              なくしたって笑っていられる マガイモノに囲まれたい



              「好きなもの」の中身を置き換えることで、
              様々な状況下の人々に
              ある程度当てはまってしまう、
              恐ろしい表現。
              たとえば『趣味』『家族』『仕事』。
              たとえば『思想』。

              自分の『好きなもの』を守ることが、
              『平和』に繋がるとは限らない。

              別の角度からそれを見ている誰かに
              せめられたり、奪われたり、
              それはわるいものだと諭されたり。

              その『好きなもの』に裏切られたりね。


              カーテンを閉めよう


              カーテンを閉める≒心を閉ざす、
              というメタファー。
              …と、同時に
              『深夜にやっとカーテンに気付いたのか!』って
              このリアリティがまた面白い。


              悪いことしてなくても それは起きてしまう なぜ?


              平和な関係を築いても 誰かにとっちゃ退屈らしい
              スリルの消えたこの部屋は どんな居心地だったの教えて



              『おまえ』が出て行った原因が
              垣間見えるこれらのフレーズ。
              なぜ?と問われたならば、
              『悪いこと』というのは大体、
              した人とされた人で解釈が異なるからだ。

              なお「平和な関係」
              「スリルの消えたこの部屋」も、
              様々な集合体に当てはまる表現。
              たとえば『家庭』『会社』『有志団体』『国家間』。
              たとえば『ミュージシャンとそのファン』。


              忘れかけたころ 悲しみは空から 降る


              ことわざ『青天の霹靂』
              想起させるフレーズ。

              思いがけない『おまえ』の失踪を
              喩えた表現である。
              と、同時に、
              日常を破壊する爆撃も災害も、
              その多くが空から降ってくるものだ。
              従ってこれは
              ダブル・ミーニングの隠喩と言える。


              同様に、


              毛布のような平和が欲しいだけだ


              は、ダブル・ミーニングの直喩と
              考えることができる。

              困難な状況下で、差し出される毛布。
              ささやかなものだけれど
              あたたかく、安息を与えてくれるもの。

              災害時にも紛争地でも必要なこのアイテムを、
              『この部屋』『夢』から連想される
              個人的なそれに落としこんでいるという、
              何とも秀逸な表現である。


              なんだかんだほざいたって 
              くやしがるやつの負け



              これは最近気付いたことだけど、
              ラストのこのフレーズにいたっても、
              両面の解釈が出来るのかもしれないな、と。

              センセーショナルなものに惹かれた結果、
              パートナーを捨てた側が負けなのか。
              安定を守ろうとした結果、愛想を尽かされ、
              『毛布』をかぶって呻いている側が負けなのか。

              クスリを飲んで無理やり眠っても、
              きっと答えは出ないだろう。
              『平和』自体、立ち位置によって
              変わってしまうものだから。

              平和って概念って人によって違う。
              自分は平和だと思っていても他の人は
              何かが足りなく感じているかもしれない(略)
              人と人もそうだし、国と国もそう。
              解決するのは結構大変。


              稲葉さん本人もこんな風に語っているように、
              この曲は大きなテーマを含有している。

              ただし、だからと言って、
              『わるいゆめ』の歌詞世界は
              人類平等を祈念しているわけでも、
              不穏な世界情勢を嘆いているわけでも、
              奮起して誰かを糾弾しているわけでもない。

              基本的には、ただ出て行った
              『おまえ』を思い出し、
              悲しみボヤいている男の物語なのだ。

              逆に、だからこそ
              様々な立ち位置の人の心にシンクロし、
              それぞれの『毛布のような平和』を
              想い起こさせるのではないだろうか。


              こういった
              『個人的問題と普遍的テーマのリンク』は、
              稲葉浩志独特の手法と言えるかもしれない。
              その話はまあ、また次の機会に。



              最後まで読んで下さって
              ありがとうございました!


              →わるいゆめ 歌詞
              0

                SNOWの圧倒的閉塞感

                • 2015.01.04 Sunday
                • 18:32


                もう去年になるけれど、12月は
                いつメリもシャバダバナスティも聴かずに
                (というか、何故かiTunesから吹っ飛んでいた)
                SNOWばっかりエンドレスで聴いていたら、
                びっくりするぐらい気分が沈みましたこんばんは。

                あまりに闇が気持ち良いので、
                このSNOWの歌詞が発する負の抱擁力って
                一体どこから来るんだろうって考えてみることにした。



                ■『音』について

                SNOWを歌いながらなぞってみた時、
                まず独特の言葉選びに気が付いた。

                …まあ気が付くも何も、冒頭から
                「寒い」「暗い」夜は「いやだ」という
                トリプル沈鬱ワードが登場するのだ。
                加えて「夜」も、暗い感情のメタファーである。

                さらに、


                女々しい・眠れぬ・ひとり・
                うそ・偽り・閉められた・
                壊してしまいたい・手放した・
                帰ってこない・溜め息・悲しみ




                など、言葉を拾っていくだけで
                もうしにたくなるほどの
                悲観的な言葉がてんこ盛り。

                さらに、これらを分解していくと、
                『ない』という言葉が多い事に気付く。
                短い歌詞なんだけど、
                その中で7回も『ない』が登場するのである。

                また『ない』に限らず、


                寒い・暗い・女々しい・物思い・
                偽り・雪・悲しみ・溜め息




                など、母音が『い』で終わる言葉、
                『い』が含まれる言葉が、形容詞に限らず
                非常に多く使用されていることが分かる。

                実際、発声してみると分かるんだけど、
                日本語の母音『あいうえお』の中で、
                『い』は、口をあまり開かない発音。
                分類で言うと『狭母音』と呼ばれるもの。
                →非円唇前舌狭母音

                口を開かないためか狭母音は、
                きつさや鋭さ、閉鎖的なイメージを与えがち。
                この狭母音を多用することで、
                楽曲全体に、ひんやりした失意を漂わせている。
                絶妙な言葉のチョイスと言える。



                ■「手紙」と「ドア」と「雪」

                SNOWの歌詞に登場する印象的なアイテムは、
                上記3つのキーワードである。
                これらは何を意味しているのだろう。


                まず「手紙」とは、相手に
                用件があったり、近況をやり取りしたり、
                自分の感情を告白したかったり。
                そんな理由で送られるもの。

                手紙が印象的な歌詞としては、
                宇多田ヒカルさんのLettersがある。
                奔放な相手から一方的に残されている
                置き手紙=約束を信じ、
                待ち続けてしまう淋しさと、
                深い愛情を歌った素晴らしい作品。
                →Letters


                雪に言葉はない 手紙も届けられない


                大雪の日は、手紙だって届かない。
                だけど本当は、雪が降っていなくても
                『手紙』は送られないかもしれないのだ。
                雪に閉ざされていれば、連絡の途絶えた現実を
                後ろ向きに誤魔化す事が出来るのだ。

                ただ、『雪に言葉はない』というフレーズから
                ここでは実際のそれではなく、
                通じ合わない感情をあらわすメタファーとして
                『手紙』が使われているとも考えられる。



                次に「ドア」を見てみよう。

                「ドア」からは、あの人が訪ねて来る。
                あの人が帰ってくる。
                そして、あの人が出て行く。


                だれもノックしない

                君とのことを 思い出す時はいつも
                ドアというドアを閉められたよう



                出て行った「君」どころではなく、
                「だれもノックしない」
                「ドアというドアを『閉められた』よう」
                という受動的な表現から、
                どうしようもない寂寥感が浮き彫りになっている。
                よって「ドア」は、具体的な人の往来と同時に、
                主人公の閉ざされた心の状態を
                象徴したアイテムと言える。



                最後に、楽曲タイトルにもなっている
                「雪」(SNOW)を考える。

                雪にはまず、冬の季語としての役割がある。
                加えて冒頭の「眠れぬこころ」というフレーズから、
                雪の日の深夜、ということが分かる。

                なお、他にも
                span style="color:#006633">「雪に言葉はない」
                「すべては息を潜める」
                など、随所に見られる描写により
                しんとした雪の夜独特の空気感、
                仄暗い部屋に佇む主人公の様子が
                ありありと浮かんでくるのだけど、
                雪自体の話からは脱線するので
                この辺りでやめておく。


                象徴表現としての「雪」を考える時は、
                楽曲ラストの下記描写に着目したい。


                踊れ 雪よ やまないで今は
                溜め息を 優しく吸いこんで
                つもれ この世の悲しみを全部
                深く 深く埋めてしまえ



                「雪」はその白さから、心理学的に
                浄化、潔白、儚さ等の清いイメージを持つ。
                同時に、孤独や自己否定、別れの象徴でもある。

                強い恋慕、辛い後悔、深い孤独。
                その全てを覆い尽くす、圧倒的な白。

                つまりSNOWに登場する「雪」には、
                動揺する感情をフリーズさせ、
                痛む心の隙間を埋める、
                『ネガティブな救い主』としての
                役割が与えられていると考えられる。


                やり場のない淋しさと、
                心の扉を閉ざした自棄な気分は、
                正反対なようでいて、両立し得るもの。
                この何とも微妙な人間の感情の揺れを、
                SNOWはこの3つのキーワードで
                見事に表現していると言えるだろう。




                さて…(えっ)
                3年連続で年末年始に暗い分析をする私。
                →2013.01.06 Okayの黒と白(MV妄想)
                →2013.12.31 波とThe Morning Call

                やっとB'zを書いたのに、結局暗いポストという。
                何故か年末って毎年落ち込みがちだから、
                それをチャンスとばかりに書いている結果である。

                SNOWは死ぬ前に一度でいいから
                生で聴きたい楽曲のひとつ。
                どうしてこんなに冷徹な優しさを感じるのか
                ずっと考えていたから、
                稚拙とはいえ自分なりに咀嚼できて良かった。

                今回も少し書いたけど、彼の歌詞って
                言葉自体の意味だけじゃなく、
                音声学的にも優れているように思っていて。
                稲葉さんが意図的に使っているのかは分からないけど、
                その方面から探ってみるとまた
                非常に面白く歌詞が読める予感がしている。

                ただ、日本語学概論の単位を落とした私には
                圧倒的にその知識が足りず、常に悶々としているので
                今年はそれを勉強します。年始に決意しておく。
                稲葉先生、いつも学びをありがとうございます。


                読んで下さってありがとうございました!

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                  自転車のきみ

                  • 2014.09.21 Sunday
                  • 17:55


                  Bicycle Girlが初めてですよ。
                  初聴でヒッど変態!って慄いたのは。

                  この曲に関しては、
                  ストーカー的な暗さを語る感想と、
                  え?どこが?爽やか恋愛ソングじゃない?って声とが
                  はっきり分かれているのが面白いなーと。

                  本人が「ちょっと変態的な(笑)」って言っていたけど、
                  多分そのインタビュー知らなくても、私は
                  ド 変 態 ソングだと確信したに違いない。

                  じゃ何が変態なんだよ?って話なんだけど、
                  状況的にはよくあるシーンなんですよ。
                  通勤・通学時間が一緒で、毎日のように
                  偶然会ってしまう人っているよね。
                  その人が段々気になってしまうっていう。
                  これは普通に甘酸っぱい話だもん。


                  問題は描写なんだよ。


                  自転車のきみが僕を追い越す
                  さらりとした かろやかな朝
                  肩にかかった髪 舞い

                  自転車のきみが甘い匂いだけを
                  華麗に置いてった その後姿
                  耳から垂れた白い線が揺れる



                  肩より長い髪から漂う、甘い匂い。
                  まず何故ここで『香り』を使わないのか。


                  "かおり〔かをり〕
                  よいにおい。香気。

                  におい〔にほひ〕【匂い】
                  そのものから漂ってきて、嗅覚を刺激するもの。"

                  (デジタル大辞泉)



                  これを見る限りどちらを使っても良いんだけど、
                  『匂い』の方が生々しく、実物に直結した印象を受ける。
                  「今夜はステーキね!良い香り!」ってあんまり言わないじゃない。
                  つまり『きみ』から漂うその甘い匂いを、
                  意識下で熱心に嗅いでいるというわけ…。

                  あとあれだ、震え上がったのがここ。



                  耳から垂れた白い線が揺れる



                  何で『イヤフォン』って言ってくれんのや…(震え声)



                  イヤフォンという名称を敢えて使わず、
                  『耳から垂れる白い線』と表現することによって、
                  その女の子の雰囲気が伝わってくる。
                  ここで『黒い線』だと違ったんだよね。

                  『白い』はイヤフォン線にかかる形容詞なのに、
                  何故か自転車を漕ぐ女の子、その
                  真っ白なふくらはぎまで想像出来てしまうという。

                  私がここを聴いて真っ先に浮かんだのは、
                  谷崎潤一郎の処女作だった。


                  "丁度四年目の夏のとあるゆうべ、
                  深川の料理屋平清の前を通りかかった時、
                  彼はふと門口に待っている駕籠の簾のかげから、
                  真っ白な女の素足のこぼれているのに気がついた。

                  鋭い彼の眼には、人間の足はその顔と同じように
                  複雑な表情を持って映った。
                  その女の足は、彼に取っては貴き肉の宝玉であった。

                  拇指から起って小指に終わる繊細な五本の指の整い方、
                  絵の島の海辺で獲れうすべに色の貝にも劣らぬ爪の色合い、
                  珠のような踵のまる味、清冽な岩間の水が
                  絶えず足下を洗うかと疑われる皮膚の潤沢。
                  この足こそは、やがて男の生血に肥え太り、
                  男のむくろを踏みつける足であった。"

                  (谷崎潤一郎:『刺青』)



                  谷崎は足フェチドMの変態作家なんだけど(※大好きです)
                  その執拗な足描写が、とにかく美しい。
                  この、籠からこぼれた『真っ白な足』と
                  『耳から垂れた白い線』が脳内でシンクロしてしまったんだよね。
                  耳に『付けた』じゃなく耳から『垂れた』っていう表現が、
                  かえって耽美的な響きである。

                  ちなみにお友達のチョモと、こないだのうさぎ島の帰りに
                  初めてBicycle Girlの話をしたんだけど、
                  二人同時くらいに「谷崎」って言い出して、鳥肌が立った。
                  「『刺青』でしょ!?『刺青』!!」って彼女が叫んだ時、
                  ああこの人はド変態や…!って堅い握手したよね…。


                  気になるよ いつまでも
                  誰の声に夢中になってんの?
                  教えてよ その秘密を
                  軽いめまいがして駅へと急いだ



                  女の子がイヤフォンをしていただけで、この妄想。
                  この日初めて彼女を意識したはずなのに、
                  『教えてよ その秘密を』って倒置法まで用いて
                  独占欲を芽生えさせているから恐ろしい。

                  ちなみに『駅へと急いだ』という所で、
                  『僕』が電車通勤(通学)だってことが分かる。


                  自転車のきみが携帯の画面見ながら
                  うふっと笑ってた横顔
                  運転中だというのに危ない不謹慎



                  危ないのはお前だってツッコミは予想されているはずだ。
                  『うふっと笑ってた横顔』って…(;∀;)
                  細かい描写はフェティストのあらわれです(自己紹介乙)


                  気になるよ いつまでも
                  どんなメッセージが届いてんの?
                  教えてよ その秘密を
                  今日は一日がなんだか暗くなりそう



                  自転車のきみ=名前も知らない女の子が
                  携帯を見て笑っていただけで、
                  嫉妬で一日悶々とするって恐ろしすぎない…?
                  さらに、この次の朝には


                  自転車のきみが現れない
                  ざーざー雨の灰色の朝
                  傘を跳ねる水玉の音聞いて



                  こええええええええ(;∀;)(;∀;)
                  『きみが現れない』って、偶然じゃなくて
                  完全に待っているじゃないですかー(;∀;)(;∀;)(;∀;)

                  携帯画面の日は『一日が暗くなりそう』などと
                  落ち込んだ感情描写を入れていたのに、
                  『きみが現れない』
                  『ざーざー雨の灰色の朝』
                  と、事実や情景だけを淡々と描くことで
                  逆に執着心の強さをだな…(;∀;)


                  そういえばこの、雨の中を立ち尽くす描写が
                  強烈に心に残っていた私は、
                  en-ballグッズ売り場の受付に、ちょこんと立って
                  お客さんを待っているあのenブレラを見て、
                  今回のLIVEの裏テーマになるグッズかもって
                  勝手に思ったんだよね。
                  無機質な街の中で、まるくもいびつに繋がる人と人。


                  ちょっと脱線したから話を元に戻そう。


                  ここを悪い例としてあえて書き直すと、
                  『雨が強く降っている今朝は
                  いつも出会う自転車の女の子が現れないな
                  何だか淋しい』

                  ってだけなんだよ?
                  この3行だけで、ここまで想像させるって凄いなーって。

                  『自転車で通る女の子が』じゃなくて
                  『自転車のきみが』って連呼するから、
                  まるで彼女に関わっている当事者みたいな感じがするよね。
                  その子は『僕』のこと、全然知らないだろうにね…?


                  教えてよどうしてだろう
                  君がいないと心が静か



                  この流れで聴くと怖いっちゃ怖いんだけど、
                  これは、片思い経験がある人なら
                  誰しも少しは覚えがある描写かと。
                  …ていうかここからラストまでは、
                  稲さん『これはさすがにヤバイ』と思って
                  爽やか青春なラストで纏めたんじゃないかって
                  勘ぐってしまったw
                  ここに騙された強い印象を持ったのか
                  女性DJが「キュンキュンします♥」ってラジオで言っていて、
                  ヒィイイィってなった私w
                  なお稲葉さん本人は「そうですか、はあ〜」と
                  他人事のように言っていたw


                  最初にも書いたけど、シチュエーション的には
                  『よく見かける知らない子を好きになってしまう』っていう、
                  よくある恋愛話。

                  少し似たシチュエーションの曲として浮かぶのは、
                  私が好きなaccessのこの曲かな。


                  いきなり目が覚めた OneDay MORNING
                  Bedから転げ落ちたDREAMING
                  舞い上がった君との Play MAKE LOVE

                  君に近づきたいから CALL UP
                  その前に確かめなきゃ NUMBER
                  話した事もないのに MY GIRL
                  どうにかなるさと思えるよ Fine Day

                  急げ 急げ 車にとび乗って
                  震えきてる グリップ落ちつかせて
                  Hurry Up Hurry Up そこまで来ている
                  Hurry Up Hurry Up 君の待つStation

                  (access:『LOOK-A-HEAD』)



                  これも、話した事すらないのに
                  いきなり夢でメイクラブしているっていう
                  結構アレな始まり方なんだけど、何だろう
                  「ああ青春だ…!男の子だなあ!」って思えるのは、
                  執拗な『君』の描写が無いのと、
                  曲の途中で『君』に直接アプローチしていって、
                  夢=君を手に入れるよ!ってラストだからなんだろうなと。

                  それより何より、何故このを出したかって言うと、
                  聴いてもらったら一番分かるんだけど
                  ▶LOOK-A-HEAD(1:00位から曲)
                  歌詞より曲が、とにかく明るくポジティブな響き。
                  サウンドもキラキラと軽やかなんだよね。


                  さて、Bicycle Girlに戻る。
                  稲葉さん、今回は
                  「歌詞を先に書いて、それに合う曲を付けた』
                  としきりに仰っていましたね。


                  何であんな曲にしたし…?


                  多分きっと、Bicycle Girlに漂うねっとり変態臭の
                  一番の理由はそこなんだよ。
                  フォロワーさんとも話したんだけど、
                  これが松本さんの陽な曲、音に乗ったとしたら、
                  印象は違っていたかもしれないねって。
                  いや描写の特殊さは変わらないだろうけど。
                  そういう意味でも、確実な『ソロ』を感じる曲だなあ。

                  …何かひどい書き方してる気がするけど、
                  Bicycle Girl、私ものすごく好きですよ!!(必死)
                  で、この曲をこんな陰湿な聴き方している私が
                  正常なわけがないっていうのも
                  うすうす分かっているよ!(知らんわ)
                  まあ要するに変態は変態の気持ちが分かるっていう、
                  そういう話です…。


                  なお、この日本には
                  『自転車を漕ぐ女性の脚を映すアダルトビデオ』
                  が存在します。
                  ちょっと見た事あるけど、色々な自転車のペダルを漕ぐ
                  女性達の尻から太ももやふくらはぎを、
                  延々と映し続けるビデオであった。
                  バイクじゃダメなようで、必ず自転車。
                  なお、こういう写真集もあるそうです。
                  (※ギリギリなので注意)


                  …もし『きみ』が、自転車乗りではなく徒歩だったら、
                  印象はどうだったんだろう。

                  ここまで女の子と主人公について見てきたけど、
                  曲名を『Bicycle Girl』にするぐらいだから、
                  もしかしたら『自転車』自体が、
                  フェティシズムを感じるアイテムなのかもしれない。
                  ああ、人間の性癖って計り知れないですねって話。


                  何か今回特に苦情が来そうだなw
                  何回変態って言うねんって自分で思った。
                  あくまでクソド変態が聴くとこう聴こえるってだけなので、
                  気にしないで胸キュンしてね!(黙れ)
                  これが正しい聴き方ってわけでは勿論ないです。
                  むしろないと思いたい

                  読んで下さってありがとうございました!

                  0

                    世界の、におい

                    • 2014.08.31 Sunday
                    • 23:04


                    まあ、夏がじんわりと
                    終わっていくわけだけども。
                    無さそうだね、en-zineの更新…はは。

                    多分この『毎月』って所を、稲さん本人は
                    知らない、または忘れている気がしてきたw
                    いいですよ、年単位更新にならなければ
                    大丈夫ですよ…。

                    考えてみたら、こんなに
                    情報に溺れるほど恵まれることってそうないし、
                    枯渇には慣れて…ないけども(;∀;)
                    ほんのちょっとの生存確認でいいんだけどな。
                    それ以前に、映像化の心配をしているんだけど。
                    その情報を一番待っている…。
                    ビューイングがあったから心配しているんだよね…。
                    あれで利益回収出来ちゃったんじゃないかとか
                    あと、予告編のようなあのSaturdayのMVが
                    あまりにもクオリティ高すぎて、逆に
                    あれが完成形だったらって心配してるんだよね(;∀;)
                    うん、でもされるはずだよ。
                    待ってる。


                    さて、うだうだテンション下がらせてる
                    時間が惜しいので、
                    en-ballに行って、自分なりに改めて気付いた
                    稲葉浩志の歌詞の世界の奥行きを、
                    少しずつ書いていこうかと思う。


                    稲葉浩志の歌詞の、何が優れているかって
                    その情景描写なんだよね。
                    特に、ソロで多いんだけど、曲の初めに
                    情景描写を入れる事がちょくちょくあって、
                    さらに中間で時間経過を示す描写もあったりして、
                    その表現の巧みさによく唸ってしまう。

                    先月配信された、Saturdayもそうだよね。


                    別の世界に続いている
                    たった一つの出入口みたいに
                    太陽が空に丸い穴を開けて
                    霧は吸い込まれ街は目覚めた
                    (稲葉浩志:『Saturday』)


                    『太陽』についての記述って、大体
                    輝く、強い、明るい、眩しい…などの
                    ポジティブな言葉が続くもの。
                    それを『空に開いた丸い穴』と表現するなんて、
                    ド素人な私には考え付きもしなかった。

                    ちなみに『朝霧』は秋の季語になるんだけど、その霧が
                    太陽に「吸い込まれ」ていると描くことによって、
                    まだまだ強い、晩夏の日差しまで連想が及ぶ。
                    さらに2番で夏の季語「冷たいソーダ」を入れ、
                    歌の世界の温度が、皮膚感覚で伝わるようになっている。


                    太陽の記述は過去にも書いたけど、
                    この2曲も印象的ですね。


                    朱い朱い海に くらげのようにとろけてゆく太陽
                    君がすぐにどこかに行かないように 手を握ろう

                    まだ幼い闇のむこうに 星たちが浮かびあがり
                    君は群青(ぐんじょう)に吸い込まれるように 消えてゆくの
                    (稲葉浩志/『波』)



                    朝もやを切りさくように 黄金色に海が輝いたよ
                    神さまでもいそうな 気配がして思わず 電話したくなった

                    夕焼けのときとは違う ひまわり色に空が染まってゆくよ
                    (稲葉浩志/『The Morning Call』)



                    どちらも色の描写が大変美しくて、飾っておきたくなる。
                    そしてもうここだけで、二人の関係性にぐっと関心が向く。



                    太陽の話をしたので、
                    今度は夜の描写を考えてみる。


                    光を弾いて 敷きつめた雲は魚の群れのよう
                    目を閉じ ざわめく気持ち鎮め 空をただよう

                    夕暮れの潮風を 受けながら回り続ける観覧車
                    ネオンサイン 道行く人たちを平等に照らす
                    (稲葉浩志/『I'm on fire』)


                    夕方から、ゆっくり日が暮れていく様子。
                    人々の往来が絶えない、都会の情景が浮かんでくる。


                    月に群れる 雲が散らばり
                    人の影は際立って
                    テールランプの隙間をぬって
                    ただ走り風に酔って

                    街を埋める 邪なdream
                    うらやんで信号を待って
                    背中にクラクション 浴びてシャイなアクション
                    誰もみちゃいないけど
                    (稲葉浩志/『炎』)


                    『テールランプの隙間をぬう』
                    『風に酔う』という記述から、
                    主人公は夜にバイクを運転していることが分かる。
                    独りで誰かを想いながら。



                    次は、雨の描写。


                    やみそうもない雨の滴 窓辺ではでに飛び散って
                    鳥の声もエンジンの音も 遠く綺麗にぼやける
                    (稲葉浩志/『Overture』)



                    眠くなるようなはやさで
                    水玉を蹴散らしてく
                    揺れるワイパーを見ながら
                    遅刻のいい理由考える

                    遠くにそびえる
                    真新しいbuilding
                    かすんでる最上階
                    あの頃あんなの
                    なかったなんて
                    心で話してる
                    (稲葉浩志/『静かな雨』)



                    注意報を聞きながら 嵐の予感を胸に
                    サンクチュアリめざす夜 ワイパーの動きさえも止まって見える
                    (稲葉浩志/『絶対(的)』)


                    サンクチュアリを目指す彼の行く末は、
                    幸せなのか、それとも破滅なのか。
                    夢中な時って、確かにワイパーの動きなんか
                    全く意識しなくなるよね。危ない不謹慎。



                    花の描写で美しい曲は、
                    意外にも?B'zにあった。


                    幾千の花びらが 風に舞い踊り
                    桃色の蝶のように 道路(みち)を埓擇辰討
                    (B'z/『ピルグリム』)


                    『桜』という言葉を使わず、
                    『桃色の蝶』と表現することによって、
                    春のあの儚く美しい色味を、リスナーに想起させる。
                    さらに花びらが散っていることから、
                    春というだけでなく、具体的な時期まで想像出来る。

                    こういう詩的な表現は
                    B'z(特に2000年頃〜08年頃迄)では少ない方だけど、
                    時々エッセンスのように要所要所に使われていて、
                    じんわりとその効果が響いてくる。
                    あまり沢山使うと、
                    演奏の強さや輝きが弱くなってしまいかねないし、
                    何よりHRやパンクロックには乗せにくいだろうから、
                    絶妙な割合だなーと感じる。
                    (※素人が何か言ってるよって感じだけど今更だ)


                    また、情景描写の中でも
                    風景のみではなく人物の様子で、
                    その他の様々な情報を、知らぬ間に
                    リスナーの心に忍び込ませる描写もある。


                    首すじを ちろりと 汗が這って落ちる
                    思わず 見とれてる 無防備な顔さらし

                    キミに飲みほされた グラスがカランと鳴り
                    真剣に妄想中の僕は 蒸し暑い夕方に気づく
                    (稲葉浩志/『横恋慕』)


                    夏の夕方のじっとりとした気候、
                    それと同じくらいウェットな、
                    登場人物の感情が伝わってくる。
                    首筋の汗と、冷たい飲み物が夏の季語だけど、
                    これ歌詞の中で
                    『氷』という単語は使っていないんだよね。
                    書いていると思い込んでいて、気が付いた時びっくりした。
                    それだけはっきりと、氷の入った飲み物を
                    脳内に再現させるんだよな。

                    そして『キミが飲んだジュース』などではなく
                    『キミに飲みほされたグラス』
                    という表現を使うことによって、
                    『キミ』を潜在的に崇める、女性優位の図が浮かぶ。

                    さらに言うなら『飲む』の後に続けて
                    具体的な飲み物ではなく
                    『グラス』とするところが、
                    彼女との性的な関係がない(≒未だ至れない)事を
                    表現しているような。
                    『飲みほされる』って明らかに
                    性的な表現だから。
                    グラスを自分に見立てて妄想中なのかも、と妄想。

                    冷房が効いていないということは、この『うるさい店』は
                    オープンカフェだったりするのかな。
                    キミとアイツと僕、三人の仄暗いお茶会。
                    (夕方+食べる表現が出てこないので、
                    昼食でも夕食でもないはず)
                    その風景だけで、こんな深い作品を書けるって
                    すっごいよな…。



                    文句無く綺麗な姿で
                    ペリカンたちが飛んで行って
                    波の打ち寄せる河口沿い
                    小さな教会で
                    誰か静かに結婚してる

                    ぶ厚い雲を押しのけて
                    落ちる光に目を細め
                    僕は君との距離を測るのに
                    手間どりながら
                    答えは何も見えぬまま


                    着飾った二人は寄り添い
                    新しい幸せ誓う
                    ぼんやりそれを眺めてる
                    僕も君もそろそろ
                    帰らなくちゃいけない時間
                    (稲葉浩志/『Cross Creek』)


                    密やかに永遠の誓いをするカップルを、
                    何をするでもなくぼんやり眺めている二人。
                    『僕も君もそろそろ』でおっ!となったら
                    帰らなくちゃいけないんだね。

                    何だか理由がありそうな、結婚式カップル。
                    何だか理由がありそうな、僕と君。
                    先の日差しの記述で用いなかった
                    『眩しい』という形容詞を、
                    『キミ』の描写で使っている所に、
                    二人の関係がよくあらわれている。



                    …さて…(えっ)
                    まだまだ情景描写はあるんだけど、
                    特に私が優れていると感じた歌詞を
                    独断と偏見で選んだのでご了承。
                    あと、景色の描写が見て行きたかったので、
                    明確にシンボリックなものへの表現や
                    (曲名だけど『砂の花びら』とかね)
                    感情から呼び起こされているものは
                    今回は除いた。

                    なお、SAIHATE HOTELも情景描写が凄いんだけど、
                    あの曲は難解すぎてw
                    解釈が何通りも出来るため、
                    迷子回避で今回は飛ばした。
                    いつかまた書きたいんだけどな…。


                    こうやって、歌詞の情景描写から見える
                    状況や人物像、関係を考えていくと、
                    まるで一本の小説を読んでいるような
                    気持ちになるから不思議だ。
                    本人はそこまで重たく読まれたくない気もするけどw

                    …そう、稲葉さんの歌詞の何が好きかって
                    情景描写を、仰々しく主張しないこと。
                    乱暴な言い方かもしれないけど、
                    歌詞を重んじない人が
                    何となく聞いていても、
                    全く抵抗感がない。

                    堅い言葉を使い過ぎてないことと、
                    飛躍的なポエムになっていないからかな。
                    あくまで『歌詞』として、
                    歌の世界を惹き立てている。
                    それこそが、老若男女を問わずすっと心に入ってくる
                    カギなんじゃないかと思っている。

                    稲葉さんは、日常暮らす中での
                    風景や出来事を言葉にして書き留めていくことを
                    「子供でも出来る作業」だと言っていたけど、
                    それをただの『メモ』『日記』で終わらせず
                    『詞』として昇華させられるかと言われれば、
                    断じて違うわけで。
                    ただ、おこがましいけど
                    この方法は、言葉を練る練習になるなと。

                    私は仕事で言葉を使うことも多々あって、
                    実践してみようと思う。
                    その時見たもの感じたものをメモして、
                    表現を変えてみる。
                    視野の転換にも繋がりそうで、
                    ちょっとワクワクする。
                    いつも勉強になります、稲葉先生。


                    読んで下さってありがとうございました!

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